Minstrel☆Sanctuary

自由律歌仙  真冬の森 の巻

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【表】
発句冬   やわらかなひかりが届いて
        真冬の森は 目覚めはじめる
        旅立ちを見送るために
        そんな朝                        くみこ   

脇句冬   突然の時雨のためか辺りには誰もいない     出微衣

第三雑   どこからか 笛の音が聞こえる
        ひかりのほうへ歩こう                く

雑      でもそれは風が呼んだだけのこと         出




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月の定座秋    月が見ている
            船出のときが来た                く

折端秋       帆先に鶺鴒がいる、タヒチの空        出




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【裏】
折立秋   古酒を飲むには大鉦鼓を
        二度鳴らす慣わしがある                出

恋      それは 言葉の芽生え                 く

恋      ボナン・バルンの音にざわめく肌え
        引き潮がこんなに美しいとは              出

雑      石は黙っている
        落日の水際                        く

雑      焼畑の煙がまだ燻ぶっている
        水牛の角も疲れている、とは奴からの手紙     出

雑      ランタンは 舟に生き舟に死す             く




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月の定座夏  灼熱のルソンの精霊像を照らす月
          経典が解読されることはなかった        出

夏        守宮には 星の窓がある              く

雑        仮面の眼が鋭すぎる
          確かに呪術には仮面が必要だ          出

雑        影の私がいる
          ひかりを踏んでみる                 く




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花の定座花    ビルマの王子は白馬で駈ける
            隣国タイとの戦いは
            もうどのぐらいになったろうか
            花吹雪が頬を覆う                 出

折端春       落ちてきた雲雀の冷たさ             く




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【名残の表】
折立春   立ち昇るように 漂うように 声明
        雛の闇が ひらいてゆく                 く

雑      朝鮮の王は悠然として                 出

雑      祭祀の床は 晩餐の赤と黒
        ただ ひそやかに木の沓を脱ぐ            く

雑      祝いの魚を二尾供えて                 出

冬       潮のように 
        藍が 打ち寄せてくる
        その先には 雪の頂                  く

冬      二弦琴の音が冴え渡り                 出

雑      苗族の腕輪は さざめき
        ほのかな繭あかりさえ                  く

恋      あしたのために紅を塗る                 出

恋      チベットの七日のうちに 
        どこに置いてきたのか
        時計の青い文字盤                    く

雑      古老は言い淀みて息を吸う               出




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月の定座秋   荷車が運んでゆくよ
           干草の匂いの
           十六夜の月                       く

折端秋      流星はタジクの空に
           土笛は遠くで                      出




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【名残の裏】
折立秋   葡萄たわわなタシケントの中庭で眠っています      出

雑      糸車まわせば乾く                       く

雑      発酵乳で飲み明かし
        天幕は煌々としている                    出

雑      羽ばたいてゆく馬頭琴                    く




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花の定座花    埋もれた記憶の淵を辿りながら
            塔は 翼を広げるだろう
            舞い上がる花びらを抱くように               く

挙句春       児童公園のふらここがいつまでも揺れていた      出




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平成二十年十二月二十一日 冬至
於 国立民俗学博物館
連吟  出微衣  くみこ
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by minstrel1209 | 2008-12-24 00:52 | poem