Minstrel☆Sanctuary

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枝垂れ梅



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by minstrel1209 | 2007-02-24 21:04 | scene

medusa


畦焼きの炎二手に分かれけり

機小屋の音といふ音春の雪

その水に空あり雛流しけり

雪解音橇に赤子の眠りゐる

蛇穴を出てメドゥーサの髪となる




俳句現代 5月号 2000  特集
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by minstrel1209 | 2007-02-18 21:07 | poem

myth

否定しながら女は、無意識の内に
神話の怪物となったメドゥーサの哀しみを
今も引き摺っているのかもしれない。
ステレオタイプの呪縛を捨てて、
櫻姫ときには妖精パックのように
性を超えた変幻自在な俳句を愉しもう!



俳句現代5月号 2000 特集
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by minstrel1209 | 2007-02-18 21:04 | essay

 星には花が

    
                      
サン=テグジュペリは、砂漠が美しいのはどこかに井戸を隠しているからだと書いています。昭和六十三年、京都大会に満一才の娘を伴い参加。無邪気に駆け回る娘の後を追って、大らかな微笑の照子先生に遭遇、身に余る優しいお言葉をいただきました。競泳が先生の選に。コメントは「茫洋としたところに期待します」母曰く、詩人の直感で本質を見抜いておられると。慈愛のまなざしは千里眼でもあったのですね。

              
   返り花して海彦の櫻かな       角川照子

 
平成二年、鹿児島大会。真の挨拶句とは?どうすれば心の篭った挨拶句が生まれるのだろう。これは初心の頃からの最大の謎であり、永遠のテーマ。その答えは、常に先生の作品そのものに在ると感じます。砂漠の井戸も遥かな星に咲く花も目には見えない。先生を想うとき、サン=テグジュペリの言葉が消えては浮かびます。同四年、春樹先生のサンタマリア号帰港で神戸メリケン波止場へ。「純ちゃん元気?」と娘のことをまず尋ねて下さる照子先生の細やかなお心遣いに、胸の奥が熱くなりました。


   雁来紅湖に果てのありやあり     角川照子

 
同十年、長浜大会。会場のエレベータから思いがけず出て来られて、お声をかけていただいたのが最後となってしまいました。雁の頃、岸壁に鼓動のような音を立てて打ち寄せる湖の印象は、殊に切ない想い出です。
 
おそらく太い万年筆なのでしょう。独特の文字で綴られたお手紙の行間から滲み出す温もり。河誌が届くと真っ先に開ける青柿山房だより。先生の柔らかな息遣いさえ感じられて、いつも勇気をいただきました。人に対して、どんなときも心のドアを開けておくことの大切さを教えて下さった先生。こんなにも突然お別れが訪れるとは。先生を乗せた銀河鉄道は、源義先生と真理さんの待つ駅に辿り着いたでしょうか。
 
同十五年六月号俳句界の表紙を飾る照子先生の笑顔。雛のエピソードがあまりにも痛いです。癒えない悲しみを抱えながら、他者を包み込むことができる人の笑顔。遠くて見えないけれど、瞬く星には花がひとつ咲いている。掲句、春の明るさと淋しさが寄り添って、限りあるからこその命を輝かせる。その清冽な香気に背筋を伸ばす思いです。
  

春筍の身を反らしつつ相寄りぬ    角川照子
  




河 2月号  角川照子追悼特集号   2005
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by minstrel1209 | 2007-02-18 12:20 | review

記憶のメビウス

匂いは記憶を呼び醒ます。
岬の果てまで霞のヴェール。
静謐な渚。靴が濡れていく。
零れる砂のように櫻は匂いを放っている。

アカデミー賞ノミネートの勢いで傍聴した運命の公開選考会。
俳句界賞受賞という大きな夢が叶った。
想いを掬っていただける感動の一方、
想いを伝える為、煌めくいのちを込めなくてはと痛感。
選考に携わって頂いた先生方、
どんなときも信じ見守って下さる師、友、家族に心より感謝致します。

櫻がメビウスの眠りを解いてゆく。
清冽な香りに導かれ、また旅に出ようか。



俳句界5月号 第6回俳句界賞受賞の言葉   2004


選考委員   有馬朗人  大峯あきら  岡井隆  辻田克巳  松澤昭 (敬称略 五十音順)
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by minstrel1209 | 2007-02-16 17:33 | essay

silent



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ボーモンティア・ムルティフロラ
Beaumontia multiflora
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by minstrel1209 | 2007-02-12 17:20 | scene

ロダンの掌


永き日のなにも摑まぬロダンの掌
まつすぐな木に架けてゆく巣箱かな
絵の中の渚を受験子と歩く
ひとつぶのかなしみとして蝌蚪生るる
ヨットには女の名前雁帰る

抽斗の奥の水晶卒業す
鳥容れて春の夕べの木となりぬ
タイムカプセル埋めしあたりの春の泥
末黒野といふ寄る邊なきものを踏む
ヒヤシンスの白い根受胎告知の日

雛すぎの蔵の奥処の一面鏡
身の内をさくらで満たし篭りゐる
ダイヤルの繋がるまでの花疲れ
蜘蛛の囲にして大まかな編み目かな
朴の花謡ひはじめはひとりなり

海鳴りがして香水の封を切る
ががんぼのうしろ脚より梅雨兆す
洗ひ髪羽づくろふごとくうづくまり
廃船やくれなゐの星涼しくて
足あとのひとつは仔鹿まほろばの

無造作に脱いで晩夏の救命具
海はまだ蜩の木の先にある
宙動きりんだうの青深まりぬ
繋がれてヨットの軋む秋彼岸
岸壁に秋思の脚を垂らしをり

籠抜けをして色鳥と呼ばれたる
秋霖の海にもつとも寄る木椅子
きちきちばつた心の奥に弦を張り
帰燕かなヨットを洗ふ音がして
藤の実鳴らす空を明るくするために

鳥渡りけり舟底を高く揚げ
信長が塔を持ち去り木の実落つ
蟷螂の斧の途方に暮れてをり
踏みさうになつて野菊の透明感
柚子畠のすでに尽きたる融雪剤

海の絵を見に着ぶくれて来てゐたり
日短かになる遠目鏡欲しくなる
レノン忌の舵を大きく廻しけり
行間のやうに障子の白さかな
討ち入りの日の目覚ましを鳴らしゐる

かまきりの卵まるごと冬景色
ひと口ほどの人魚の肉を喰らひ雪
浮寝鳥影といふもの無かりけり
武者溜り在りし辺りを襟立てて
人間が近づいてきて浮巣枯るる

冬麗とはこんな日の躙り口
すなめりを狩るまなざしとなつてゐし
荒れてゐて鳴らざる海を初夢に
懐手してハムレット気取りかな
白鳥の田に降りてくる阪神忌




俳句界5月号 第6回俳句界賞受賞 2004
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by minstrel1209 | 2007-02-12 09:48 | poem