Minstrel☆Sanctuary

風景の記憶

 
 人は何歳までの記憶を遡れるのだろう。硝子窓の向こうの鞦韆をじっと見つめる三歳の私。希望と不安に揺れている。いつか記憶の幻想は、世紀の果てへ流れ着く。そこには逃れようのない私自身がいる。ある日、届いたメールの封を切る。気分は弾ける木の実。「ママの状態、狂喜乱舞って言うの?」と娘。そんな四字熟語いつのまに、と動揺しつつ「そうかも…」と呟く。

 俳句は私のサンクチュアリ。俳句現代賞佳作をいただいた今、見慣れた森に皇帝の鶯を見出すような浮遊感がある。選考に携わって下さった先生方、常に見守って下さる先生、先輩へ感謝の気持ちで一杯です。私を信じ励ましてくれる友人、家族に心からありがとう。

 没日に透く身の丈の芒、彷徨う虫、露の斧、忘れられた木霊、埋もれそうな山りんどうの瑠璃。この風景自身が記憶を持っている。煌めくばかりに通り過ぎる時間を捉え、人の儚い想いを汲み上げるーその瞬間を待っている。中也の月夜の釦のように、みすゞの寂しい林檎のように、私は俳句に恋しつづけたい。




   俳句現代 2月号 第1回俳句現代賞佳作第1席☆受賞の言葉  2000
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by minstrel1209 | 2007-01-23 11:31 | essay