春の雪かもめのやうな浮遊感
赤い靴はいて色なき風の中
秋の水遠くなるほど眩しくて
浅き夢ばかりに醒めて熱帯魚
葦を焼くには葦の角おびただし
思ひつく限りの嘘を着膨れて
画集に挟む麦の穂とAIRMAIL
蒲生野の水と風とがひかりあふ
雁帰る水の底まで明るくて
寒餅のふくらむヨハネ黙示録
金星に寄る木星の余寒かな
毛糸帽目深のままの旅はじまる
香水を買ふクリムトの男かな
衣更抱きしめられるのはひとり
湖を出る川一本の暮春かな
祭列の名のある橋を渡り初む
さへづりや洗ひし筆に色残り
島影のふいに大きく種おろし
修正インクかたかたシベリア寒気団
泰西名画の中へするりと竈猫
沈黙といふ音のあり雪の山
摘草に出てゆきさうな土雛
どの雲も羽ばたいてゐる神の旅
団栗の落ちてくるとき向かう見ず
にほどりの湖底に倦めば漂へり
温みたる水にポスターカラー溶く
根の国へ人形代の流れ着く
乗り換へて海の日の海匂ひ出す
野を焼いて横恋慕は神代より
はこべらの野を校庭と呼んでゐる
畑打つておもての乾く湖の国
薔薇切つて隣の薔薇を散らしをり
パラソルに翼の生えてくる水辺
ハンモック真犯人がまだ見えず
人麿忌さざ波の立つ水たまり
雛過ぎの生まるるものに波頭
百葉箱のまはりの草をむしりをり
比良八荒みづうみへ向く方位針
ふらここをひよいと飛び下り反抗期
蛇衣を脱ぐ耐へられぬ軽さゆゑ
返事まだ出さず青きを踏んでをり
ポケットに海幸彦の竜の玉
牡丹雪ささいなことが知りたくて
ほととぎす流れの底の白い石
まつすぐに恋白靴を下ろしけり
水草生ふすでにたゆたひはじめたり
水口のごぼごぼ祭来たりけり
麦の秋行き先告げず旅に出て
もう少し隠れるための春の森
啼きつづけゐて鶯の老いにけり
俳句現代 2月号 俳句現代賞佳作第一席 2000
赤い靴はいて色なき風の中
秋の水遠くなるほど眩しくて
浅き夢ばかりに醒めて熱帯魚
葦を焼くには葦の角おびただし
思ひつく限りの嘘を着膨れて
画集に挟む麦の穂とAIRMAIL
蒲生野の水と風とがひかりあふ
雁帰る水の底まで明るくて
寒餅のふくらむヨハネ黙示録
金星に寄る木星の余寒かな
毛糸帽目深のままの旅はじまる
香水を買ふクリムトの男かな
衣更抱きしめられるのはひとり
湖を出る川一本の暮春かな
祭列の名のある橋を渡り初む
さへづりや洗ひし筆に色残り
島影のふいに大きく種おろし
修正インクかたかたシベリア寒気団
泰西名画の中へするりと竈猫
沈黙といふ音のあり雪の山
摘草に出てゆきさうな土雛
どの雲も羽ばたいてゐる神の旅
団栗の落ちてくるとき向かう見ず
にほどりの湖底に倦めば漂へり
温みたる水にポスターカラー溶く
根の国へ人形代の流れ着く
乗り換へて海の日の海匂ひ出す
野を焼いて横恋慕は神代より
はこべらの野を校庭と呼んでゐる
畑打つておもての乾く湖の国
薔薇切つて隣の薔薇を散らしをり
パラソルに翼の生えてくる水辺
ハンモック真犯人がまだ見えず
人麿忌さざ波の立つ水たまり
雛過ぎの生まるるものに波頭
百葉箱のまはりの草をむしりをり
比良八荒みづうみへ向く方位針
ふらここをひよいと飛び下り反抗期
蛇衣を脱ぐ耐へられぬ軽さゆゑ
返事まだ出さず青きを踏んでをり
ポケットに海幸彦の竜の玉
牡丹雪ささいなことが知りたくて
ほととぎす流れの底の白い石
まつすぐに恋白靴を下ろしけり
水草生ふすでにたゆたひはじめたり
水口のごぼごぼ祭来たりけり
麦の秋行き先告げず旅に出て
もう少し隠れるための春の森
啼きつづけゐて鶯の老いにけり
俳句現代 2月号 俳句現代賞佳作第一席 2000
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by minstrel1209
| 2007-01-23 11:51
| poem